脂質異常症とは
「脂質異常症」とは、血液中に含まれるコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド/TG)などの脂質が、基準内にない状態です。以前は脂質の多さだけを問題にして高脂血症と呼ばれていましたが、近年の研究で脂質の数値だけでなく、複数の脂質のバランスも動脈硬化の発症や進行に関わっていることがわかってきたため、脂質異常症と呼ばれるようになっています。
脂質異常症の3タイプ
脂質異常症の検査では、血液中の脂質の濃度である血清脂質値を調べます。血液中の脂質は3種類あり、コレステロールが2種類、もう1つの脂質は中性脂肪(トリグリセライド/TG)です。コレステロールには、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールと、善玉と呼ばれるHDLコレステロールがあります。
脂質異常症のタイプ
悪玉のLDLコレステロールが多い | 高LDLコレステロール血症 |
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善玉のHDLコレステロールが少ない | 低HDLコレステロール血症 |
中性脂肪(トリグリセライド/TG)が多い | 高トリグリセライド血症 |
コレステロールについて
コレステロールには悪玉と善玉があります。悪玉のLDLコレステロールは、動脈硬化発症のきっかけとなる脂質です。善玉のHDLコレステロールは、動脈壁に沈着したコレステロールを血液中に戻す役割を持っているため、悪玉のLDLコレステロールがそれほど多くない場合でも、善玉のHDLコレステロールが少ないと動脈硬化リスクになります。総コレステロールが高いことが一概に悪いというわけではないことがわかったため、高脂血症という呼び方をされなくなり、バランスを重視して診断・治療するようになっています。
脂質異常症の診断基準
10時間以上の絶食を行った空腹時の採血で判断します。絶食時にも糖分が含まれないお茶や水は飲んで構いません。
脂質異常症診断基準
LDLコレステロール
140㎎/dl以上 | 高LDLコレステロール血症 |
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120~139mg/dl | 境界域高LDLコレステロール血症 |
HDLコレステロール
40mg/dl未満 | 低HDLコレステロール血症 |
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中性脂肪(トリグリセライド/TG)
150mg/dl以上 | 高トリグリセライド血症 |
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Non-HDLコレステロール
170mg/dl以上 | 高Non–HDLコレステロール血症 |
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150~169 mg/dl | 境界域高Non–HDLコレステロール血症 |
Non-HDLコレステロールは、総コレステロールから善玉のHDLコレステロールの数値を引いたものです。
境界域の場合には、他の生活習慣病などのリスク因子の有無によって必要な治療が異なります。
単純に悪玉のLDLコレステロールが高い高LDLコレステロール血症だけでなく、善玉のHDLコレステロールが低い場合も脂質異常症とされます。また、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、喫煙習慣、肥満なども動脈硬化発症や進行のリスク要因ですので、そうした要因がないかも重要です。
深刻な病気を予防するために
脂質異常症でも悪玉のLDLコレステロール値が高くなると、動脈硬化の発症と進行が促され、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、脳卒中、閉塞性動脈硬化症などの深刻な病気の発症リスクを上昇させてしまいます。
肥満、脂肪やカロリーの過剰摂取は、脂質異常症の発症や進行に大きく関与し、高血圧や糖尿病など他の生活習慣病の発症や進行の大きなリスク要因です。こうした生活習慣病を複数持っている場合、それぞれが境界域程度で軽度でも動脈硬化の進行が早くなってしまうため注意が必要です。
特に肥満の解消は、生活習慣病の予防や進行防止に大きく役立ちます。その指針となる標準体重は、身長によって決まっています。標準体重はその身長の方が、最も病気になりにくいとされている体重です。標準体重を実現してキープするために、食生活や運動などの生活習慣の改善を行いましょう。
「標準体重」の求め方
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)× 22
食生活や運動などの生活習慣改善
バランスがとれた食事をとる
食後の血中コレステロールの上昇を抑えるために、食物繊維をたっぷりとってください。野菜、海藻、きのこ、こんにゃくなどは食物繊維が豊富な食材です。また、動物性脂肪などの飽和脂肪酸、マーガリンやショートニングといったトランス脂肪酸はできるだけとらないようにしてください。また、ミネラルやビタミンなどの栄養素をバランスよくとりましょう。
適度な運動を習慣付ける
少し汗ばむくらいの軽い運動を30分以上、週に3回は行うようにします。運動で血行が改善しますし、筋肉が増えれば基礎代謝が上がって摂取したカロリーをしっかり消費できます。
節酒・禁酒
アルコールは中性脂肪(トリグリセライド/TG)の値を上昇させてしまいます。予防のためにアルコールを過剰摂取しないよう心がけてください。なお、中性脂肪の数値や他のリスク要因によって、節酒や禁酒が必要になることもあります。