PADとは
Peripheral Arterial Disease (末梢動脈疾患) のことで、足の血管に動脈硬化が起こって血管が狭窄や閉塞している状態です。以前はASO (Arterio-sclerosis Obliterans:閉塞性動脈硬化症) と呼ばれていましたが、現在はより広い疾患概念であり、世界的にも使われているPADと呼ばれるようになっています。
日本では生活様式の欧米化などによって動脈硬化を進行させる生活習慣病の患者数が増加しているため、動脈硬化性疾患の患者数も増加傾向にあります。足の血管に狭窄や閉塞があるということは、全身で動脈硬化が進んでいる可能性が高く、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高い状態です。PADの治療では生活習慣の改善も不可欠ですから、他の生活習慣病の発症予防や進行防止にも役立ちます。
原因
動脈硬化が原因です。脂質異常症・高血圧・糖尿病といった動脈硬化を進ませる生活習慣病、肥満、喫煙、加齢などの要因が重なって発症します。要因が複数ある場合には、それぞれが軽度でも動脈硬化を進行させやすいとされています。また、喫煙は末梢の血管を収縮させるため、ヘビースモーカーは発症リスクが高くなります。
症状
足が痛い、足が冷える、足がしびれる、間欠性跛行(歩くと足が痛くなるので休みながらでないと歩けない)、足の色が悪い、足の傷がなかなか治らない、足に潰瘍ができるなどの症状を起こします。進行度合いによって4段階の病期(ステージ)に分かれ、ステージごとに症状が変わります。
間欠性跛行は、少し歩くと足に痛みやしびれが現れて歩けなくなり、少し休むと再び歩けるという症状で、閉塞性動脈硬化症以外にも腰部脊柱管狭窄症で起こることがあります。
フォンテインFontaine分類による病期(ステージ)
Ⅰ度 | しびれ、冷感 |
---|---|
Ⅱ度 | 間欠性跛行 |
Ⅲ度 | 安静時にも足に痛みが起こる |
Ⅳ度 | 潰瘍や壊死を起こす |
Ⅰ度からⅣ度の順に重症となり、通常はⅡ度以上が治療対象で外科的手術が必要になることもあります。
診断と治療
問診で症状を伺って、足の診察、血液検査、超音波検査、ABI検査などを行います。閉塞性動脈硬化症の検査は痛みや不快感がないため、安心してご相談ください。
検査結果から現在の状態をご説明して、適切な治療方法をご提案してます。
生活習慣の改善動脈硬化は生活習慣によって進行するため、生活習慣の改善が重要になります。特に喫煙は末梢血管を収縮させるため、禁煙が不可欠です。脂質異常症、高血圧、糖尿病など、動脈硬化を進行させる疾患がある場合にはその治療も行い、脂質やカロリーを控えて、減塩、ミネラル・ビタミン・食物繊維が多く含まれたバランスのいい食事を心がけてください。また、適度な運動を習慣にしましょう。薬物治療血管を拡張させる薬剤や、血液をサラサラにして血流を改善する薬剤による治療を行います。状態や体質、年齢、ライフスタイルなどに合わせていくつかの薬を組み合わせて、最適な処方を行っています。足のケア足の保温、ケガの予防、そして足を清潔に保つことが重要です。ハイヒール、つま先やかかとが出てしまうサンダルなどはケガをしやすいので注意が必要です。外科治療必要に応じて、カテーテル治療やバイパス手術などが行われます。カテーテル治療は、細い管を血管に挿入して狭窄している部分を風船や網状の管であるステントで拡げる治療法です。バイパス手術は、閉塞した部分を迂回するように人工血管や自己血管をつないで血流を改善する治療法です。