血栓性静脈炎とは
血の塊(血栓)が原因で、静脈とその周囲の組織や皮膚に炎症が起きる状態を血栓性静脈炎と言います。表在皮膚にある静脈に血栓が起きると、患部に痛みや腫れ・発赤の症状が見られますが、血栓は数日で消失します。また、後遺症が大きく残ることもありません。しかし、大腿静脈のような太い深部静脈につながる静脈に血栓ができると、心臓や肺へ移動してしまう恐れがあります。この状態を上行性血栓性静脈炎と言います。病状が進行すると、肺塞栓症や深部静脈血栓症などの重篤な疾患にいたる可能性があります。場合によっては、呼吸困難などを引き起こし緊急的な治療が必要になります。血栓性静脈炎は主に、下腿に発症します。炎症が進むと、発赤や腫れなどの症状に加えて、難治性の潰瘍を皮膚に形成する場合があります。
原因
静脈内に血栓ができることが原因で発症します。血栓ができる原因は、以下の内容が挙げられます。
- 血管自体にダメージが加わる病気:ベーチェット病・バージャー病
- 血液が固まりやすい状態の場合:がん・腎炎・肝疾患患者・妊婦・経口避妊薬服用中
- 長期間の静脈カテーテル留置
血栓性静脈炎は、静脈瘤が発症に関わっている可能性があるため、下肢静脈瘤のある患者さんは血栓性静脈炎を合併することがよく見られます。
症状
血栓が出来て、静脈が詰まった部位周辺に発赤や腫れ・痛み・むくみが現れます。そのほか、足の深部静脈に血栓がある場合は、ふくらはぎを掴むと痛んだり、患部が硬くなったりします。症状の軽度によって痛みの度合いが異なりますが、押すと痛みが増します。そのほとんどが10日前後で自然治癒しますが、患部の静脈が硬くなり、皮膚の上からしこりのように触れる場合があります。このような静脈は、血栓性静脈炎を再発しやすいのが特徴で、炎症を繰り返すと皮膚に潰瘍を作ります。
検査・診断
視診・触診のほか、以下の検査で診断を行っていきます。
超音波検査
病変部の血栓の有無・血流の状態を調べることができます。さらに、深部静脈血栓症を併発していないかを調べられる一般的な検査です。
CT・MRI検査
造影剤を用いて撮影をし、血管の閉塞や血栓の状態を調べることができます。それと同時に肺塞栓の診断も可能です。
血液検査
血液凝固能の異常を調べることができます。腎機能・肝機能を診ることができ、貧血の有無などによってがんや血栓が起きやすい病気がないかどうかを探ることができます。
治療
一般的に、血栓性静脈炎は自然と治る場合が多く、痛みを緩和するために湿布や鎮痛剤などの外用薬を使われる程度です。病変が大きい場合は、血栓が大きい可能性が高いため、抗血小板薬や抗凝固剤などを使って血液の凝固を防ぐための治療を行います。静脈瘤が原因で発症している場合は、静脈瘤の切除が基本です。がん・肺疾患・腎炎などが原因で血栓ができている場合は、それらの治療を同時に行います。上行性血栓性静脈炎の場合は、深部静脈血栓症や肺閉塞症に進行する場合があるため、早めの受診・適切な治療が必要です。治療方法は、手術による血栓摘出・強力な抗凝固療法を同時に行う場合があります。